一般社団法人 日本再生医療臨床学会

FreeTopics

再生医療についての情報発信ページ『free topics』を新設しました

この度、ホームページに、新コーナー 『free topics』を設けました。
会員の皆様、並びに本学会サイトをご覧頂いた皆様が、再生医療についての情報を自由に取得できることを目指し、情報を発信していきます。
このコーナーでは、医学用語や専門用語は出来るだけ避け、分かりやすい言葉に置き換えて説明しますので、正会員様からの専門性の高いご質問やご意見などは、会員専用ページ『情報の森』にご投稿頂きますようお願い致します。

さて、今回は、新しい治療として注目度が高い、『培養上清液』をテーマに取り上げます。
近年、培養上清液を使った治療を取り入れる医療機関が増えている理由についても焦点を当てて説明しますので、是非、最後までお読みください。

培養上清液とは?

幹細胞培養に使用する培地と呼ばれる試薬の上澄み液のことです。
培養した幹細胞は、全て除去した後の上澄みですので、培養上清液には、幹細胞は一切、含まれていません。

上澄み液が、何故、治療に役立つのか?

培養する段階で、幹細胞から分泌されるサイトカインやエクソソーム、成長因子など500種類以上の有効成分が、培養上清液に含まれていることが、研究や臨床などで、徐々に明らかになってきました。
これらの有効成分には、抗炎症作用(痛みや炎症を緩和)、創傷治癒作用(傷の治り)、組織・神経修復作用(組織や神経のダメージを修復)、免疫調整作用、抗酸化作用、血管再生作用など数多くの作用があることが分かり、現在、培養上清液を用いた治療に取り組む医療機関が増加傾向にあります。
※培養上清液は医薬品医療機器等法の承認を得ていないため、自由診療となります。

サイトカインとは?

主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質で、細胞間の情報伝達を担う役割もあります。
特に免疫関連や炎症に対して得意な物質です。治癒したい部位に免疫細胞を集める機能があり、痛みや炎症の治療に活用されています。
具体的には、損傷した部位や老化した部位の近くにいる幹細胞を治療部位に集中させる(ホーミング効果)ことで、治療効果が高まり、治癒時間を短縮させることに期待できます。

エクソソームとは?

身体中の細胞から分泌される直径50-150nm(ナノメートル)程度の大きさで細胞外膜小胞(カプセル状)の一つです。
エクソソームの役割は、主に臓器間の情報伝達や、免疫誘導の応答・調整、皮フや血管の再生、また体内に投与した薬剤を運搬する能力など、実に多くの重要な機能に影響を与えていることが分かっています。
また、体性幹細胞を活性化させ、弱った細胞を回復させる能力(再生能力)も持っていると言われています。

安全で高品質な培養上清液とは?

現時点では、培養上清液は、医薬品医療機器等法の承認を得ていない未承認製品です。
培養上清液に関する論文は数多く存在していますが、製品化された培養上清液は、由来(脂肪・歯髄・臍帯・骨髄など)や製造工程が各社異なりますので、その品質や安全性にも差があると言わざるを得ません。
その為、医療機関では、幹細胞の由来や、ドナー情報、成分にばらつきがないか等の検証を培養製造会社に求め、出荷前の安全試験データを入手し、慎重に取り組んで頂くことが重要です。患者さんにも、知りうる正しい情報を提供してください。
厚生労働省が承認した幹細胞培養施設で製造された製品であれば、問題ないと考えますが、用いる培養上清液に関しても、医師の責任と判断で、治療を提供してください。

正会員様のご質問やご意見は、会員専用 『情報の森』に投稿願います。