一般社団法人 日本再生医療臨床学会

幹細胞培養上清液について

幹細胞培養上清液とは

幹細胞培養上清液(じょうせいえき)は、幹細胞を培養増殖するために利用した溶液の上澄みのことです。以前は、幹細胞の培養増殖が完成すると、幹細胞を取り出したあとのこの溶液は、医療廃棄物として処分されていました。

幹細胞培養上清液は、「幹細胞を取り出したこの溶液にも、幹細胞と同様に有効な物質が滲み出し、治療に役立つのではないか?」という研究者たちの新しい仮説等に基づく研究や実験の結果、幹細胞培養上清液は治療に役立つ製品として誕生しました。
現在では、幹細胞培養上清液は、診療科目を限定せず、さまざまな医療現場で、治療に用いられるようになりました。

臨床医師が認めた幹細胞培養上清液

現在、培養が行われている間葉系幹細胞の多くは、脂肪、臍帯、歯髄、骨髄に由来します。

幹細胞培養上清液は、幹細胞培養液から、幹細胞を取り除いただけではありません。

培養増殖が完了した幹細胞を全て取り出した後に、幹細胞培養液を遠心分離し、不純物などを取り出し、ろ過、減菌などいくつかの処理工程を行い、ウイルス検査に合格した製品が、出荷を認められます。したがって、幹細胞培養上清液には、幹細胞自体は含まれていません。

医療現場で使用されている幹細胞培養上清液は、厚生局から認可された培養施設で製造された安全で高品質な製品を使用するよう推奨しています。

最近では、外用薬のみならず、品質の高いものは注射薬や点鼻薬、点眼薬としても使用されています。

幹細胞治療と幹細胞培養上清液治療の違い

幹細胞治療も幹細胞培養液治療も、細胞を修復したり再生したりする力を応用する点では同じですが、決定的に違う部分があります。

それは、幹細胞治療は、患者自身の幹細胞であるのに対し、幹細胞培養上清液は、ヒト由来ですが、他家の幹細胞を培養した際の上清液を使う点です。

幹細胞と同様に、厳重に管理された培養施設で製造され、ウイルス検査をはじめ、安全性にも問題ない製品ですので、幹細胞治療と同様に、安心して治療をうけることができます。

幹細胞培養上清液には、培養の際に放出されたサイトカインやエクソソーム、その他、500種類以上もの成長因子が多く含まれており、症状によっては、幹細胞治療に近いレベルでの効果が期待できます。

幹細胞治療に比べ、治療費が低く設定されていますので、トライアル(試験的取りくみ)や幹細胞治療のサポート的役割で、併用することも可能です。

期待できる効果

幹細胞培養上清液には、次のような有効な作用があるといわれています。

抗炎症作用

炎症が起こっている部位の治癒を促進し、疼痛も抑える。
関節痛・腰痛・頚部痛・肩痛・筋肉痛などに有効。

創傷治癒作用

損傷した細胞を修復し、早期に傷を治す。
真皮層から皮ふ表面までの細胞を活性させ、皮膚の傷痕や炎症痕を修復。

組織・神経修復作用

内臓、筋肉や末梢神経など、組織が損傷した場合、患部を修復。
損傷した組織の細胞分裂が活性化され、組織再生力が向上し、機能が回復する。肝硬変・慢性肝炎などの肝疾患、皮膚疾患、呼吸器障害、腎臓機能障害、糖尿病の合併症などに有効。

免疫調整作用

異常な免疫反応により、アレルギーがおきないよう、免疫機能を正常な状態に調整。
アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎に有効。

血管再生・血管新生作用

動脈硬化などで血流が途絶えた場合、側副血行路血管新生によって血行を再開させる。
動脈硬化などの進行を予防する治療にも有効。

抗酸化作用

体内に発生した活性酸素を取り除き、細胞の老化やがん化を防ぐ。

活性化酸素除去作用

疲労回復や生活習慣病の予防に役立つ。

若返り・美容作用

組織を修復する作用を二次的に応用し、シワやたるみなどの予防や老化改善を行う。
医薬部外品や化粧品でも注目を集めている。

幹細胞培養上清液を使った主な治療方法

全身投与

全身投与とは、点滴で、静脈内に投与する方法です。
生理食塩水に幹細胞培養上清液を溶かし、血流に乗せて全身に循環させます。

幹細胞培養上清液のもつあらゆる作用を脳以外の全身に適用できる投与方法です。

脳内投与

脳内投与は、幹細胞培養上清液を点鼻によって投与する方法です。
脳に疾患がある場合にはこの方法を用い、幹細胞培養上清液を、鼻腔から脳内の毛細血管に届けます。

老人性アルツハイマーや記憶力低下、脳梗塞後の諸症状に適応します。パーキンソン病の補完などにも有効です。

局所投与

局所投与とは、関節部などの患部に、幹細胞培養上清液を直接注射で注入する方法です。ケガや病気による組織の損傷部位に注射で注入することも可能です。

この投与方法が主に使われるのは整形外科や外科などです。